先日、芸術家の赤瀬川原平氏が亡くなりました。
実は赤瀬川氏を路上観察の師匠として勝手に崇めていました。勿論直接会ったことなんてありません。クラウド師匠の一人です。
今回は赤瀬川氏が80年代に行なっていた活動で、このブログにも強い影響を与えている路上観察学について紹介したいと思います。
路上観察学とは
80年代に赤瀬川原平や藤森照信によって結成されたのが路上観察学会というグループでした。学会と名乗っていますが、学術的な組織ではありません。サークルに近い活動といえるでしょう。
路上観察とは、その名の通り路上における諸事物を観察・収集し、面白がることです。
その観察対象は幅広く、一例を挙げると建築、破片、マンホール、張り紙、服装、そして超芸術トマソンなどなど。
そしてそれらの観察対象の面白がりかたも多彩です。単にその形を味わったり、観察対象 を収集・分類し何かしらの真理を導いたり、都市についての理解を深めたり、と目的に応じて色んな面白がりがたができます。
観察できる事物
路上観察の一例を紹介したいと思います。構造物
身近に溢れる様々な構造物。形自体を愛でる楽しみ方もありますが(「工場萌え」など)、それらの構造物がいつ出来たか、何で出来ているか、何故その形になったか、ということを探求してみるのもいいでしょう。
常磐線と小場江用水が交差する地点。(ひたちなか市武田) 二つある橋脚が石造、レンガ造と異なるのは元々単線だったことを表す。 |
道路
道路 も様々な因果を形に表している良い観察対象です。身近に溢れる道路は、どこか歪んでいたり、変な交わり方をしていたりします。
そのような都市のノイズが都市の歴史を継承しているのです。
旧塩街道と新道が分岐する地点 (千波町)。 ブロック塀は旧道に沿っており、歩道が無意味に広い。 |
微地形
地面の凹凸にも様々な情報が隠されています。普段なかなか気にかけないちょっとした起伏にも、因果関係と歴史を見出すことができます。
城東小学校脇から城東4丁目交差点方面を望む(城東) 小学校の辺りは昔の馬場川であり、交差点付近より僅かに低いことがわかる |
境界標
あちこちに立っている境界標も土地の歴史を記録している重要なメディアです。何故この場所に?というような標柱を見つけたら積極的に調べてみましょう。
水浜線跡に残された茨城交通の境界標(栗崎町) |
シミ
構造物に付着するシミや汚れの形もその場所の歴史を反映したものといえます。何故この場所にシミが出来たか、何故この形になったかということを考えてみると、何か新たな発見ができるかもしれません。
水戸芸術館の噴水。床のこの部分がガラス越しに濡れた理由は不明 |
マンホール
上下水道・電気・通信・ガスなどのインフラ供給網は現代都市の生命維持装置といえます。マンホールはそんな超重要な役割を果たすインフラの唯一のアピールの場といえます。
アピールに応え、都市インフラの歴史や、インフラ流域の川上川下を調べてみるのも面白いかもしれません。
右横書きで「制水辨」と書かれたマンホール(城東) この場所は戦前に上水道の供給エリアであることが推測できる |
空き地
現代の都市計画では、土地利用にルールが定められています。そのルールは各自治体の条例や都市計画図など紙上で確認するのが一般的ですが、それらのルールを頭に入れておくと、土地利用を見て逆にルールの存在を推測することができます。
例えば不自然に開けた空き地を発見したら、そこは都市計画道路の予定地である可能性が高いです。
建物の基礎が残っているところは立ち退いた場所である可能性が高い |
超芸術トマソン
超芸術トマソンとは端的に言えば、まったく役に立っていない物件です。名前は80年代に巨人軍に所属していたトマソンという助っ人外国人です。
それがトマソンであるかどうかを見極めるには、何が役に立っているかということを考えなければなりません。
無用階段。階段を上った先に何もない。(青柳町) |
路上観察のためのDPZ記事
今回紹介したのはほんの一例で、本気になれば街の中のすべてのものを観察することができます。最後にもう何度も参照しているデイリーポータルZの路上観察系の記事を貼って締めたいと思います。
みなさんもこれを見て是非路上観察に開眼してください。
へんな区界をめぐる/デイリーポータルZ
計測フェチ参上/デイリーポータルZ
20kmひたすらまっすぐな道を走ってみた/デイリーポータルZ
練馬に県境が一目でわかる場所がある!/デイリーポータルZ
エスカレーターメーカーを見究める/デイリーポータルZ
市街地で分水嶺を探す/デイリーポータルZ
石を見分けたい/デイリーポータルZ
建物の汚れカタログ/デイリーポータルZ
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