戦時中に米軍が作成した日本の都市地図が話題になっています。
テキサス大学のオースティン校のデジタルアーカイブで保管されているもので、誰もが無料で閲覧できます。
今回は米軍が作成した戦時中の水戸の地図を閲覧していきます。
「空襲以前」の日本都市地図集。米軍1946年発行。主要都市を網羅してすべて見れます。圧倒的に詳細。驚くほど正確。なによりも図面が明るく見易い。戦前の日本へタイムトリップしてみましょう。http://t.co/MN7mZ8SNf3 pic.twitter.com/win0Su6G1G
— 高木壮太 (@TakagiSota) 2014, 11月 14
このデータベースには全国の主要な都市の地図が掲載されています。
この地図は陸軍測量部による1:25000地形図を基に作られていると思われますが、陸軍測量部地形図に比べてこの地図が優れているところは、カラー版で水域などが明瞭になっている点、そして文字による豊富な情報量でしょう。
陸軍測量部の地形図では軍事関連の施設はカモフラージュして描かれている場合があります。しかし、この米軍地図では軍事関連の施設も正確に描かれています。ということは全部バレバレだったということですね。
工場のほか、学校や諸官庁の名称、道路名や橋梁の材質などが文字情報として書き込まれていて、非常に濃い内容の地図となっています。
米軍発行の水戸・勝田の地図(クリックで拡大) |
では注目ポイントを見ていきましょう。
馬場川
城東周辺の地図 |
水戸城の外堀として掘られ、現在は埋め立てられてしまった馬場川が確認できます。
この馬場川は陸軍測量部による地形図をはじめとして様々な地図に登場していますが、こうしてカラーで表示されたものは初めて見ました。こうして見ると、外堀としての役割が一目瞭然ですね。
同場所の地形地図(カシミール3Dで作成) |
川としての歴史が今もなお微地形として記録されています。
ほんのわずかな傾斜に川の記憶を残す(城東) |
漢字の誤読
水戸八幡宮、松本町付近 |
那珂台地の崖下に走る小場江用水も、米軍に把握されていたことがわかります。
そうそうこの地図、漢字の誤読が多くて小場江(おばえ)がKobaeと表記されています。
その他、◯◯町がCHOではなくMACHIと書かれていたり(例:根本町(ねもとちょう)→NEMOTOMACHI)、
八幡町(はちまんちょう)→YAWATAMACHIなど異音同字の表記が目立ちます。
おそらく製作グループの中に漢字を読める人はいたけど、それぞれの地域に精通していた人はいなかった、ということでしょうね。
城東の貨物線
先程と同じ城東付近の地図 |
鉄道ファンの間でも根強い人気を持つ廃線跡。
水戸市内では水浜線や茨城線の廃線跡、また那珂川貨物駅までの貨物線の廃線跡が楽しめますが、今回米軍地図で新たに発見した軌道があります。
それは那珂川貨物駅から先へ、城東の水戸地方専売局(現・凸版印刷)と日清製粉水戸工場まで続く軌道です。
地図内で「Mito Monopoly Bureau」と記されている場所が水戸地方専売局、「Nisshin Flour Mill」と記されている場所が日清製粉水戸工場です。
日清製粉水戸工場についてはこのサイトに詳しい情報が載っています。
現在の地図を見ると、凸版水戸工場の区画の角が大きく削られていることがわかります。
これがおそらく貨物線の軌道の名残なのでしょう。
また凸版水戸工場の北側の住宅の敷地も廃線跡で区切られているようで、航空写真で見るとぼんやりと線が浮かび上がってきます。
前にこの辺りを散策したときに、住宅の建ち方が少し変わってるな、と思った記憶はあるんですが、まさか廃線跡だったとは。驚きました。
常陸山生誕の地 |
現在は水戸出身の横綱・常陸山生誕の地の碑が建つ広場になっています。
もしかして線路を作る際に立ち退きとかに遭ったんでしょうか。
Mito Electric RR CO
下市から吉田神社付近を拡大してみてみましょう。中央に、Mito Electric RR Coという文字が見えます。これはあの水戸電気鉄道です。水戸電気鉄道は水戸-石岡間を直線で結ぶことを目的として1928年に開業した幻の鉄道です。茨城町奥谷までしか辿り着くことができず、1936年にわずか8年間という期間で営業を休止しました。この地図が作られた当時は既に営業をおこなっていなかったはずなので、車両基地だけがこうして残っていたのでしょうか。
この場所をGoogle Mapで見てみると、区画がそのまま残っていることがわかります。この不思議な形の区画は水戸電気鉄道の車両基地が由来だったんですね。もしかしたら今でも水戸電気鉄道の境界標が確認できるかもしれません。
まとめ
上記のように過去の土地利用が現在の都市の形に影響を与えていることが見て取れます。この地図で取り上げたい場所はまだまだたくさんあります。
勝田の軍需工場群であったり、名もなき水路の数々であったり、とにかく見所が多い地図なので是非ご覧になって一緒に都市の深部を掘り起こしていきましょう。
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